新NISAの非課税メリットと、税務署職員が意外と使っていない理由

2024年から「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まりました。
従来のつみたてNISA・一般NISAが一本化され、恒久化された制度です。
非課税枠が大幅に拡充されたこともあり、投資初心者にとっても利用しやすくなりました。

私は旧つみたてNISA時代から引き続きNISAを活用しています。
ただ、意外に思われるかもしれませんが、税務署の職員が皆NISAを使っているわけではありません。


現職時代の実感:「NISAやってない人、けっこう多い」

現職時代の飲み会で投資の話題になると、
「NISAもふるさと納税もやっていない」という職員が少なくありませんでした。

ふるさと納税については、「地方税財源の移転」という思想的な理由から
あえて利用しないという考え方も理解できます。

また、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、所得控除が取れるとはいえ、
60歳まで資金が拘束される点を嫌う人も多いでしょう。

しかし、NISAまでやっていない職員が多かったのは正直意外でした。
税の仕組みを熟知している立場だからこそ、
制度の有利さは理解しているはずなのですが……。


公務員にとっての「NISAの心理的ハードル」

一つの要因は、倫理面の慎重さだと思います。
実際、勤務時間中に株取引を行って懲戒処分となったニュースを
見たことがある方も多いでしょう。

また、国税職員の場合、直近1年間に所属していた部署の所掌法人の株式は
取引が禁止されています。
(株式取引が「利害関係」に当たると判断されるためです。)

そのため、「少しでも怪しく見える行動は避けよう」という
心理的ブレーキが働くのかもしれません。

もっとも、指数連動型の投資信託(いわゆるインデックスファンド)への投資は問題ありません。
NISA口座を通じて、S&P500やオルカンなどのファンドに積み立てる分には
倫理上の問題はないとされています。


新NISAの非課税メリット

NISAの最大の特徴は、配当・譲渡益が非課税になることです。

通常、課税口座で株や投資信託を売却すると、
利益に対して20.315%(所得税+住民税)が課税されます。
しかし、NISA口座内で得た利益は、非課税。
確定申告も不要です。

たとえば、100万円の利益を確定させた場合、
課税口座なら約80万円のキャッシュが残り、約20万円の税金が天引きされますが、
NISAならそのまま100万円のキャッシュが残ります。


所得税法上の注意点:損益通算できない

NISAのもう一つの特徴として、損益通算ができない点があります。

通常の課税口座では、A銘柄の利益とB銘柄の損失を相殺(損益通算)できますが、
NISA口座の損失は相殺できません。まぁ売却益非課税との整合性から仕方ないですね。

如才無きことながら、これらの点を理解していただいて、積極的に活用していきたいです。


制度が続くことを願う

非課税の恩恵は非常に大きいですが、
恒久措置であるとはいえ、将来の制度改正リスクもゼロではありません。

たとえば、

  • 恒久措置の撤回
  • 売却益への社会保険料負担の導入
  • 投資額上限の縮小
    といった議論が将来出てくる可能性もあります。

長期で安心して投資を続けられるよう、
制度が安定して運用されることを願うばかりです。


まとめ:制度を理解し、安心して使う

NISAは、税制の中でもっともシンプルかつ強力な「合法的な非課税枠」です。
制度を正しく理解し、ルールの範囲内で活用すれば、
誰でも再現性のある資産形成が可能です。

税務署職員であれ、独立した税理士であれ、
自分の手で制度を使いこなしてこそ、説得力のある助言ができます。

制度があるうちに、ぜひ味方につけていきましょう。