横断歩道を見て渡れる ― 開業初期の行動と学び方

開業日誌にあふれる「先輩の声」

税理士として独立してみると、世の中には「開業日誌」と名のつく記録が驚くほど多く存在していることに気づきます。
kindleにも多数ありますし、ひとり税理士を実践されている方々の多くが、ブログやHPで開業当初の気持ちや行動を記録として残してくれています。

これは本当にありがたいことです。私のように、これから自分の道を模索している立場からすると、その一つひとつがまるで足元を照らしてくれる街灯のように思えます。


超近代史から学ぶということ

「歴史から学ぶ」とよく言います。
ただ、中学高校で習うような歴史上の出来事を現代に応用するには、かなりの抽象化が必要です。戦国武将の逸話を令和の税理士業務に直結させるのは、どうしても無理があります。

一方で、数か月前に独立した先輩税理士の体験談は「超々近代史」とでも呼ぶべきもの。失敗や成功、入ったサブスクが便利だったとか不要だったとか、そういった細部の経験談を数か月単位で追体験することができる。これは現代だからこその学び方だと思います。


行動の試行回数と「失敗談」の価値

独立当初は、とにかく行動の試行回数を増やすことが大事だと感じています。
ただ、「失敗したくない」と思うと、どうしても身動きがとれなくなる。

そこで役に立つのが、諸先輩方の失敗談です。
失敗談があるということは、必ず「何かを試した」ということ。挑戦したからこそ失敗があり、そのプロセスを残してくれている。

逆に「挑戦しなかったことによる失敗」は、表に出にくい。だからこそ、挑戦してみること自体に価値があるのだと思います。


横断歩道を渡るように踏み出す

私は最近、この状況を「横断歩道を渡る」ことに例えています。

もし周囲が暗く、車の有無もわからないまま横断歩道に立っていたら、怖くて一歩を踏み出せません。
でも、明るく照らされた横断歩道であれば、左右を確認して、一歩一歩渡っていける。

諸先輩のブログや記録を読み漁ることは、暗闇に街灯をともすようなものです。
失敗談や挑戦の記録を知ることで、私は暗闇を手探りで進むのではなく、明るく見通しの良い横断歩道を渡るように行動できるようになります。

ただし、明るい横断歩道に立ったまま、いつまでも足を出さなければ意味がありません。安全確認をしてもなお、立ちすくんでしまえば前には進めない。
その点だけは気をつけたいと思っています。


先輩の言語化から、自分の言語化へ

独立してすぐの若手税理士の記録からは、本当に多くのことを学べます。
同時に、私自身も「開業当初の思いや気づき」をきちんと言語化して残していきたいと感じます。

読んでいただく方にとっても参考になり、かつ自分にとっても「記録」として残る。
挑戦をして、それを言葉にして残す。そこにこそ、次につながる価値があると信じています。


20年前と今の違い

もし私が20年前に開業していたら、状況はまったく違ったでしょう。
当時は今のようにブログやSNSも普及していません。先輩の記録を簡単に追体験することはできず、人に会って話を聞き、そこから吸収するしかなかったと思います。

もちろん、それも大切な学び方です。令和の今でも、人に直接会って学ぶことは欠かせません。
ただし現代では、それに加えてオンラインに膨大な知見が残っている。これを活かさない手はありません。

私は、20年前のやり方と令和のやり方、その両方の良さを取り入れながら、自分の道を作っていきたいと思います。


おわりに

「横断歩道を見て渡れる」。
これは私にとって、開業当初の心境を端的に表した言葉です。

挑戦と失敗の記録を残してくれた諸先輩に感謝しつつ、自分もまた挑戦し、その過程を言葉にして残していきたい。そう思っています。